特別養護老人ホーム

特徴

要介護認定を受けた高齢者が入所する施設です。基本的には 入浴、排泄、食事等の介護、その他日常生活の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行います。在宅サービスとは違い、日常生活の支援や身体的な介護保険サービスは24時間いつでも受けられます。

しかし、病院とは違い、夜間の看護師の配置義務はないため、日常的に医療が必要な方は入所ができない場合があります。

介護保険サービスについては、基本的に施設内で全て完結しなければならないため、外部の介護保険、医療保険サービスの利用は原則出来ません。ただし、主治医が必要と判断した場合に限り適用が可能です。

入所期間は、基本的には看取りも行っているため、自主退所を希望しなければ退所の心配はありません。いわゆる終の棲家です。しかし、常時高度な医療処置が必要になった場合は、別の施設などに転居しなければならない可能性があります。

ここがポイント!

●身体介護(体に触る介護)・生活介護(生活上の世話)・機能訓練などの世話を専門職が行ってくれる。
●夜間の看護師の配置義務がないため、夜間も医療処置が必要な方は入所が出来ない場合がある。
●外部の介護保険・医療保険サービスの利用はできない。ただし、主治医が必要と判断した場合はその限りではない。
●入所期間はなし。基本的には、逝去されるか自主退所希望のみ。

特別養護老人ホームには2つタイプがある

特別養護老人ホームには、従来型とユニット型といわれる2つのタイプが存在します。

従来型・・・2人や4人部屋(個室もあり)いわゆる多床室で構成され、施設全体で介護を行います。イメージとしては、病院のような感じです。

ユニット型・・・2002年度の制度改正により、新しく特養を新設する場合は、すべてユニット型となりました。そのユニット型というのは、全てが個室となっており、約10人程度の小規模のエリアを1ユニットとして介護を行う施設です。いわゆる自宅の延長に近く、グループホームなどに似ています。全て個室になっていることから、プライバシーの尊重がなされ、個別ケアに特化した施設とも言えます。

入所条件

以下の要件が入所条件とされています。

● 65歳以上の要介護3以上の方
● 40~64歳までの特定疾病が認められた要介護3以上の方
● 特例により入所が認められた要介護1・2の方

特例による入所条件

次に特例による入所が認められた要介護1・2の条件についてお伝えします。

● 知的障害や精神障害などで、日常生活を送るのに支障をきたす行動や症状などが頻回に見られる場合。
● 認知症の影響により、日常生活を送るのに、支障きたすような行動や症状が頻回に見られる場合。
● 病気を患っている同居家族、高齢により介護が出来ない状態にある場合。また、在宅介護だけでは生活が送れない場合。(単身世帯も含む)
● 虐待の疑いもしく虐待を受けており、心身の安全が確保出来ない状況の場合。

他にも、集団感染をする可能性のある感染症を持っている方や24時間看護処置が必要な方、看取り対応を行っていないなどの理由で、受け入れが出来ない施設もあります。

入所費用

費用については4つの費用に分類されています。

施設サービス費

介護保険サービスを受けるための費用となります。介護度が高くなるにつれて、介護に要する時間や手間も増えていくため、料金は高く設定されています。また施設のタイプによっても異なります。

従来型 ユニット型
要介護1 16,710円 19,080円
要介護2 18,750円 21,090円
要介護3 20,850円 23,280円
要介護4 22,890円 25,290円
要介護5 24,870円 27,300円

居住費

料金については厚生労働省から基準費用額が設けられています。個室や多床室、施設のタイプ(従来型・ユニット型)で料金が変わります。

居室のタイプ 基準費用額(月額)
ユニット型個室 59,100円
ユニット型準個室 49,200円
従来型多床室 特別養護老人ホーム 25,200円
介護老人保健施設 11,100円
従来型個室 特別養護老人ホーム 34,500円
介護老人保健施設 49,200円
介護療養型医療施設
(介護医療院)
※施設により料金の違いがある場合があります。

介護サービス加算

施設の設備や施設の対応、職員の人員体制、有資格者の数など、サービスごとに基本料金に加算されることを「介護サービス加算」といいます。

介護サービス加算とは、国が定める一定の基準を満たしていないと加算料金をとることが出来ないので、加算が多いほど基準を満たし良い施設という見方も出来ます。

食費

特別食やこだわりのある食事でなければ、「1日1,380円」です。

日常生活費

シャンプーや歯磨き粉、トイレットペーパーなどの家庭でも使う日用品の費用のことをいいます。

月額の入所費用の例

ユニット型個室に入所された要介護5の方の例。介護サービス加算と日常生活費に関しては、一例です。

内訳 利用料金
施設介護サービス費 27,300円
居住費 59,100円
介護サービス加算(例) 5,550円
食費 41,400円
日常生活費(例) 10,000円
合計 143,350円

提供されるサービス内容

特別養護老人ホームで提供されるサービス内容については、都道府県で定められている「運営に関する基準」に則ってサービスの提供がされます。

食事

・栄養士がバランスの摂れた献立を立て、入所者の体の状態に合わせた形状や嗜好の食事を提供する。
・1人で食べることが出来ない人に関しては、介護職員や看護職員による食事介助の提供を行う。
・胃ろう造設者に関しては、看護職員によって栄養注入が行われる。

排せつ

・入所者をトイレに誘導する(手引きや付添い、見守り)。
・寝たきりの人に関しては、介護職員や看護職員がオムツ交換等を行う。
・尿意や便意がない方については、介護職員や看護職員が時間帯を決めトイレやオムツ交換等を行う(排せつのコントロール)。

入浴

・基本的には最低週2回の入浴を行うことが定められている。
・浴場への誘導を行う(手引きや付添い、見守り)。
・洗身や洗髪などの身体介助を行う。
・浴槽に入れない人については、「※特殊浴」で入浴を行う。
※座ったまま、寝たままで浴槽に入れる特殊な機械。

緊急対応

・夜間帯は看護師の配置義務がないため、看護師不在の施設が多い。しかし、施設で医療的な問題があった際は、看護師が駆けつけることになっている。または状態によっては電話からの指示だけの場合もある。(例えば、直ぐに救急搬送の指示等)

健康管理

・定期的に提携病院(クリニック)などによる医師が施設に訪問し、診察や検査を行う。
・看護師が常に入所者の状態を記録し、医師へ報告を行う。

看取り

・施設で最期をとげられる様に、医師や施設職員が共同して支援を行う。支援内容については、本人や家族の意向などで変わってくる。

生活支援

・居室の掃除や洗濯、洗濯物の取り込みなどの家事全般を行う。
・冬の時期に関しては、ノロウィルスなどの感染防止対策に沿った掃除を行う。

機能訓練

・施設で暮らしていても、体を少しでも衰えさせないために、リハビリの実施。
・食前に飲み込みを良くするための、口腔体操の実施。
・転倒防止を行うための、転倒防止体操。
・クイズ形式に楽しんで行う脳トレの提供。

レクリエーション

・施設で暮らしていても、退屈しないために「昔遊び・習字・季節ごとの行事(夏祭り・文化祭・敬老会など)」の実施。
・機能訓練の内容もレクリエーションの一環として行う場合がある。
・入所者同士のお茶会。
・外に出て、買い物や花見、外食、温泉などを企画したレクリエーションの提供。

問題点

費用面に関しては、公的施設のため民間企業の施設より費用が圧倒的に安く済みます。しかし、その分人気があるため待機者が多く、なかなか入所するのが難しいです。優先順位も申込み順という訳ではないため、年単位で待つ方もいます。