アルツハイマー型認知症

わが国では、高齢化問題が社会問題となっていますが、それと比例して認知症患者の増加も問題視されております。特に「アルツハイマー型認知症」は、全認知症の中でも約6割を占めると言われています。

アルツハイマー型認知症の罹患は女性が多い傾向

正直なところ様々な説があり、性差については、未だはっきりとは分かっていませんが、男性より女性の方が「1.4倍」高いと言われています。

しかし、女性は男性よりも長生きする傾向なので、その分だけアルツハイマー型認知症にかかる確率も上がるとも言えます。

脳の神経細胞の破壊が原因

アルツハイマー型認知症の発症原因は、脳に特殊なたんぱく質が溜まり、神経細胞が死滅していくことからと言われています。死滅が進むと、認知機能に障害が発生し、さらに脳も萎縮し、様々な機能が失われていきます。

※特殊なたんぱく質がたくさん神経に留まることにより、神経が毒され死滅。
※特殊なたんぱく質:アミロイドβとタウ

ここがポイント!

● アルツハイマー型認知症は認知症発症の全体の約6割が占めている。
● 男性と比べて女性の罹患率が「1.4倍」も高いと言われている。
● 脳の神経細胞が死滅していくことにより、脳が萎縮する。

アルツハイマー型認知症の症状

記憶障害

「物忘れ」です。しかし、私たちもよくしてしまう「物忘れ」とは全く違います。健康の方の物忘れは、一部分だけを忘れます。例えば「夕食のおかずを忘れる」といった感じです。しかし、アルツハイマー型認知症の方は「夕食を食べたことを忘れます」。

判断力の低下

判断力と言われても、イメージがつきにくいと思いますので、判断力低下の一例をご説明します。

・例(料理)

料理というのは、一般的にメニューを決め、食材や調味料、調理方法を考えながら行っていきます。

しかし、判断力が低下をしてしまうと、メニューは決められても、どんな食材を使うのか、どのくらい調味料を入れたらよいのかなどの判断が出来なくなります。もし、途中まで出来ても「次何するんだっけ?」となります。

アルツハイマー型認知症になると、物事の工程を組み立てることが出来なくなるので、家事が出来なくなります。

見当識障害

見当識とは「今日は何月何日」「今は何時何分」「今自分のいる場所」「今目の前にいる人は誰か」など、自分が現在置かれている状況のことを、見当識と言います。

そのため、何度も同じ時間を聞いてしまったり、自分の居場所が分からなくなることを「見当識障害」と言います。

加齢による物忘れと認知症による物忘れ

加齢による物忘れ

★ 体験の一部を忘れてしまう。

「加齢による物忘れ」の場合だと、一部を忘れてしまっているだけなので、ヒントや前後の体験を話すことで、思い出すことができます。そして、加齢による物忘れは、忘れてしまったことが分かります。

認知症による物忘れ

★ 体験そのものを忘れてしまう。

「認知症による物忘れ」の場合は、体験そのものが抜け落ちている状態なので、ヒントや前後の体験を話しても思い出すことができません。本人は物忘れをしていることも分かりません。

加齢 認知症
記憶 体験の一部を忘れる 体験したこと全体を忘れる
見当識 人の名前が出てこない 人の顔を忘れる
日常生活 支障なく送ることが出来る 営むことが難しくなる
判断力 おおむね出来る 出来ない
進行性 極めて緩やか 急速に進行していく
人格 変化なく維持される 人格の変化をする場合あり

※「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」のイメージ図。(画像:厚生労働省HPより:https://www.mhlw.go.jp/seisaku/19.html)

若い時は、たくさんの情報をキャッチし、自分に必要な情報だけを器にドンドン入れていきます。しかし、老化していくとキャッチする手は衰えていき、情報が正確に器に入れていくことが徐々に出来なくなっていきます。

一方、認知症の場合は、情報をキャッチする手は極端に衰えるため、情報をキャッチすることが出来ません。そして進行していくと、情報を抱えていた器も衰え、情報が大量にこぼれていきます。

アルツハイマー型認知症の予防策

原因ははっきりと解明はされていませんが、生活習慣の見直しをすることで、予防に繋がるとされています。

食生活の改善

脳に必要な栄養素が行かなくなることで、発症のリスクが高くなるといわれています。また青魚の摂取は認知症の発症リスクが軽減するといわれています。

睡眠の確保

睡眠の確保をしている人と、していない人では、5倍も違うといわれています。睡眠を行っているときの脳は、アミロイドβという老廃物を取り除きます。その老廃物の蓄積により、神経細胞が破壊され、認知症のリスクが高くなります。

楽しく運動

適度な運動は、脳が活性化され、認知症のリスクの低下に繋がるといわれています。声を出して歌ったり、昔遊びや大勢の人と話すことも有効とされています。また、介護保険サービスによる「通所介護:ディサービス」などで、こういった活動を積極的に行っています。