介護保険制度

介護保険制度は、1997年12月に「介護保険法」が制定され、2000年4月1日に施行されました。「介護保険制度」は「法」の基に成り立っているため、介護が必要になったからといって、直ぐに介護保険サービスを利用することは出来ません。介護保険サービスを利用するには、然るべき手続きを行い、承認を得なければなりません。

また、介護保険制度とは、加齢や病気など何らかの理由により1人では日常生活を送れない人のために、少しでも自立した生活が送れるように、保険給付から援助される制度なのです。

★ポイント1:介護保険制度は「介護保険法」の基に行われている。

★ポイント2:介護保険サービスを利用するには、決められた手続きを行わなければ、介護保険サービスの利用が出来ない。  

★ポイント3:介護保険制度は自立した生活が送れるように、保険給付の援助により行われている。

介護保険制度に至るまでの歴史

介護保険制度までの歴史
年代 主な動き 主な施策
1960年代 〇高齢者福祉施策の始まり
高齢化率5.7%
〇1963年
・老人福祉法の制定
・特別養護老人ホーム創設
・老人家庭奉仕員(現ホームヘルパー)法制化    
1970年代 〇老人医療費の増大
高齢化率:7.1%
〇1973年
・老人医療費無料化
1980年代 〇社会的入院や寝たきり老人の社会的問題化
高齢化率:9.1%
〇1982年
・老人保健法の制定
〇1989年
・ゴールドプラン(高齢者保健福祉推進十か年戦略)の策定
・施設緊急整備と在宅福祉の推進
1990年代 〇ゴールドプランの推進
〇介護保険制度の導入準備
高齢化率:12.0%
〇1994年
・新ゴールドプラン(新・高齢者保健福祉推進十か年戦略)策定
・在宅介護の充実
〇1996年
・連立与党3党政策合意
・介護保険制度創設に関する「与党合意事項」
〇1997年
・介護保険法成立
2000年代 〇介護保険制度の実施
高齢化率:17.3%
〇2000年
・介護保険施行
※情報元:厚生労働省のHPより

なぜ介護保険が施行されたのか

老人福祉法のやり方ではだめだったのか?

介護保険制度の前身となる「老人福祉法」から現在の介護保険制度に、何故変更をせざるを得なかったのか。それは、今とは違う老人福祉法に問題点がいくつかあったからです。それらについて解説したいと思います。

利用者がサービスの選択が出来なかった

今では当たり前のように、利用者が介護保険サービスを選ぶことが出来ます。しかし、老人福祉法では、サービスの選択は出来ませんでした。では、誰が選ぶのか。それは、区市町村がサービスの種類とサービスの提供機関を決めていました。

サービスの種類もそうですが、独断で提供機関を決められてしまうというのは、とても心理的な部分に左右されます。福祉というのは、人と接することで成り立つもので、ディサービス1つ取っても、その場所の雰囲気や人との相性が合わなければ、辞めたくなります。そして、また手続きから始まりと非常に手間がかかるため、中には必要なサービスがあっても、利用を拒む人も出てきました。

所得調査が必要だった

老人福祉法の場合は、本人や扶養義務者の収入に応じて利用者負担(応能負担)を支払うため、中高所得層にとっては支払いの負担が重いという側面がありました。また、所得調査が必要だったため、本人やその家族の心理的な抵抗がありました。

サービス内容が画一的になっていた

上述でお伝えした通り、サービスの種類やサービスの提供先については市区町村が決めることになっていました。そのため、提供側にとっては利用者を待てばいい状態です。

それは「競争原理」が起きなくなる原因だっため、どこのサービス提供事業者も一緒のことをやっており、且つ努力をしなくても良い状況でした。そのため、サービスの多様性に欠け、サービスに進展がない状態となっていました。

介護を要する者が長期療養する場所としては不十分だった

病院は治療を目的とする場所なので、病院で働いている職員や生活環境の面で、介護を必要としてる者からは不十分な環境でした。

・居室面積が狭い。
・食堂というスペースがない。
・基本的にはベッドのみ生活。
・風呂がない。

さらに、介護を理由とする者が一般病院及び一般病棟への長期入院が増えたことにより、医療費が膨らむという問題が発生しました。

介護保険制度の導入までの経緯

老人福祉法では、深刻化する高齢化問題には対応できないため、高齢者介護を国民および社会全体で支え合う仕組みが必要でした。その前身となる考え方が、次のようになっています。

自立支援・・・介護を要する高齢者に、ただ身の回りの世話をするのではなく、自身で出来ることは極力やってもらうなど、残存能力生かした支援などを行う。そして高齢者が自立した生活が出来るように支援を行う。

利用者本位・・・利用者の意志で、医療サービスや介護サービスを総合的に受けられる制度の構築が必要。

社会保険方式(※1)・・・給付と負担の関係が明確にわかるよう、社会保険方式を採用が必要。
(※1)年金制度において、加入者同士が保険料を出し合い、それにおいて年金給付を受けられる仕組みのこと

老人福祉法と改正当時の介護保険制度の違いについて

老人福祉法 介護保険法制度
・行政の窓口で申請を行い、区市町村がサービスを決定。 ・利用者によるサービスの種類やサービスの提供先の選択が可能。
・福祉サービスと医療サービスが別々の申し込み。 ・居宅サービス計画書を作成し、福祉・医療のサービスを総合的に利用が可能。
・市町村や公的団体が中心となりサービスの提供を行っていた。 ・民間企業やNPO法人など多様な事業者によるサービスの提供が可能。
・中高所得者の利用者負担が重く、利用がしづらい。
例:年収800万円の給与所得者、両親が月20万円の年金受給者
○ 特別養護老人ホーム:月19万円
○ ホームヘルパー:1時間950円
・所得に関わらず、利用負担が1割負担。
例:年収800万円の給与所得者
両親が月20万の年金受給者

〇 特別養護老人ホーム:月5万円
〇 ホームヘルパー:30分~1時間400円

※情報元:厚生労働省HP