高齢者がかかりやすい病気

高齢者は若い人とは違い、体が衰えていくため病気にかかりやすくなります。厚生労働省は「H28年:国民生活基礎調査」を実施し、その中で「要介護(支援)になった原因は」という調査を全国で行いました。

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病名 全体の割合
1位 認知症 18.0%
2位 脳血管疾患(脳卒中) 16.6%
3位 高齢による衰退 13.3%
参考:厚生労働省
※熊本県は除く。

これらを見る限り、数ある病気の中で、いかに認知症や脳血管疾患にかかる高齢者が多いことが分かります。少しでも病気にかかるリスクを抑え、直ぐに対応ができるよう、高齢者がかかりやすい病気について知っておくと良いでしょう。

不眠症

高齢者によくある症状の1つが不眠症です。60代以降から徐々にその割合が増し、80代には3人1人は不眠症になると言われています。不眠症の主な原因が、下記の通りです。

  • 活動量の低下(運動不足)
  • セロトニンとメラトニン物質の生成不足(睡眠を促すホルモン物質)
  • 持病が増えた
  • 不安などのストレスによる影響
  • 体内時計の乱れ
  • 食事量の低下(必要な栄養素が摂れていない)
  • 屋内にいることが多い(日光を浴びない)

などの原因により不眠症が引き起こされてしまいます。

病気の併発

不眠症というのは、ただ眠れないだけではありません。眠れないというだけで、体にさまざまな影響を及ぼします。

● 風邪が引きやすくなったり、感染症を引き起こしやすくなる。
・睡眠不足により体が休まらず、免疫力の低下により引き起こしやすくなります。

● 高血圧になりやすい。
・通常は夜に眠ることで、交感神経より副交感神経が優位になり、眠っている間に血圧が下がります。しかし、夜に眠らないということは交感神経が高ぶり続けることになるので、血圧が下がらず高いままになってしまいます。

● 心筋梗塞や脳梗塞になりやすくなる。
・高血圧になると、必然的に心筋梗塞や脳梗塞になる可能性が高くなります。

● 糖尿病を誘発しやすくなる。
・睡眠不足になると、食欲を抑えるホルモンが減少します。そのため、暴飲暴食をしてしまう傾向にあるため、不摂生がたたり糖尿病のリスクを高めてしまいます。

● 認知症になりやすくなる。
・認知症の発症を防ぐには、規則正しい生活をすることが大前提です。それは「食事・運動・睡眠」どれも欠けてはいけません。不眠症になると十分な睡眠がとれなくなるため、認知症になるリスクを高めてしまいます。

不眠症の解決策

基本的には、バランスのとれた食事を摂り、日の光を浴び、適度な運動といった規則正しい生活をすることが大事です。それらの行動は、睡眠を促すホルモンが分泌されるため快眠に繋がると言われています。

運動については、介護保険サービスの中に、「運動(リハビリ)を行うサービス」がありますので、担当のケアマネジャーに相談した上で、利用してみると良いでしょう。

悪性腫瘍(がん)

人間の体は、何十兆個もの細胞から成り立ってできています。がんというのは、簡単にいうと正常な細胞が変異したことをいいます。通常、細胞というのは傷ついた細胞や老化した細胞を必要に応じて「増殖」「分裂」を繰り返し、新しい細胞へ入れ替わります。これを新陳代謝といいます。

しかし、さまざまな原因により傷ついた細胞などが、入れ替わることなくそのまま生き続けることがあり、そういった細胞が死滅せずに「増殖」「分裂」をすることで「腫瘍」が生まれます。これが、がんの始まり(入口)です。※:良性か悪性かは別です。

● がんの始まりについて

① 通常の細胞は、「増殖」と「分裂」を繰り返し、新しい細胞に入れ替わる。
② 何らかの原因で、異常が見られた細胞が死滅せずに、悪い細胞が「増殖」や「分裂」を繰り返す。

その結果・・・

③ 腫瘍が形成される。
※その後「良性」「悪性」かに分かれます。

高齢者の死因となる病気

2017年に厚生労働省が、高齢者が死因となる病気の統計をとり、最も多かったのが「悪性新生物(ガン)」です。医療の発展により、ガンによる死亡は少なくなったと言われていますが、ガンによる死亡数はまだまだ多いです。

下記に、高齢者の各年代別でみた死因をまとめた表を作成しましたので、ご覧ください。

順位 65~69歳 70歳代 80歳代 90歳代
1位 悪性新生物(ガン) 悪性新生物(ガン) 悪性新生物(ガン) 心疾患
(90~94歳)

老衰
(95~99歳)

2位 心疾患 心疾患 心疾患 老衰
(90~94歳)

心疾患
(95~99歳)

3位 脳血管疾患 脳血管疾患 脳血管疾患
(80~84歳)

肺炎
(85~89歳)

悪性新生物
(90~94歳)

肺炎
(95~99歳)

4位 不慮の事故 肺炎 肺炎
(80~84歳)

脳血管疾患
(85~89歳)

肺炎
(90~94歳)

悪性新生物
(95~99歳)

5位 肺炎 不慮の事故 老衰 脳血管疾患

悪性新生物「がん」が、どの年代にもランクインしており、がんで死亡する高齢者が多いことが分かります。

がんの予防

がんの予防についてですが、基本的には「これをやったから予防が出来る」というものではありません。それは、がんは様々な要因からなるためです。

しかし、できる限りがんにならないようにすることは可能です。それは、「規則正しい生活」を送ることです。これはがんに限ってのことではありませんが、国立がん研究センターの研究からは、下記にある5つのことを見直す必要があるといわれています。

● 食生活の見直し
● 節酒
● 禁煙
● 適正体重の維持
● 適度な運動

介護保険サービス

がんの予防は上記のように、規則正しい生活をすることで発症のリスクを抑えることが出来ます。しかし、そういった環境を自ら作れない方は、介護保険サービスを利用してみるのも一つの方法です。

介護保険サービスの中には「通所介護(ディサービス)」「通所リハビリテーション病(ディケア)」といったサービスがあります。これらのサービスは、適度に運動し(たくさんやることも可能)やバランスの摂れた食事を摂ることができ、通うことで生活にメリハリが出来ます。がん予防もですが、健康増進といった意味で利用してみると良いでしょう。

白内障

白内障とは、目の中にある水晶体と呼ばれる部分が、濁ることで起こる病気です。一般的に濁る原因とされているのが「加齢」です。加齢により水晶体の成分である、たんぱく質の変化が関係しているといわれています。

症状が軽いものも含めて、白内障にかかる確率

年代 割合
50代 37~54%
60代 66~83%
70代 84~97%
80代 ほぼ100%
しかし、白内障は加齢以外でも起こる場合があります。下記に、加齢以外になる4つの要因を紹介します。

● 糖尿病
・糖尿病を持病としている人は、健康な人よりも「約5倍」も白内障になる可能性があるとされています。また、性別差では、男性より「女性」の方が白内障になりやすいことが分かっています。さらに、血糖値のコントロールが出来ていないと、白内障の進行が早くなります。

● 放射線
・放射線は、目の中にある水晶体にダメージを与えやすいといわれています。特に短期的に大量の放射線を浴びた場合、白内障になる確率がかなり高くなることが分かっています。

かつて、チェルノブイリ原発の事故で被ばくした方が、10年以上経過後の様子を調べたところ、多くの方が白内障にかかっていたことが分かっています。

● ステロイド剤
・ステロイド剤には、飲み薬や塗り薬、吸入薬などがあります。その中でも、全身疾患の病気に関係する内服薬と、主に喘息の治療に使用されている吸入薬が白内障の原因になりやすいことが分かっています。

ステロイド剤が原因での水晶体の濁りは、水晶体の後嚢部中央から進行し、皿状の濁りができるのが特徴です。また、加齢が原因での発症と比べて進行が早く、発症から手術が必要な状態になるまでの期間は「数ヶ月から1年程度」と、進行が早いといわれています。ステロイド剤を使用している方は、主治医や眼科医とよく相談してください。

● 紫外線
紫外線は、皮膚だけではなく、目に浴びることで白内障になるリスクを大きく上げます。また、既に白内障になっている人であれば、進行が早まりますので、サングラスをかけるなど、紫外線をなるべく浴びないようにすることをおススメします。

白内障の症状

白内障の初期は、目立った症状はあまりみられません。しかし、進行していくと・・・

● 目がかすむ
● ぼやけて見える
● 二重三重に見える
● 光が眩しく感じる

◇ 目はカメラのレンズに例えられる

カメラのレンズもくもりや汚れなどがあると、ぼやけたり、意味もなく反射したりします。白内障になれば、人間の目もそのような状態になると思ってください。

さらに進行すれば、視力が著しく低下し失明に等しい状態になることがあります。また、進行した白内障の手術は、合併症の可能性が非常に高く、時間がとてもかかります。

そのため、少しでもおかしいと感じた場合には、たかが白内障とは思わず眼科に受診してください。

白内障の予防

白内障の主な原因は加齢ですが、酸化ストレスによる影響もあるといわれています。酸化ストレスをどのように予防するのかまとめましたので、下記をご覧ください。

● 抗酸化効果のある野菜や果物を毎日摂取する。(ビタミンA・C・Eなど)
・トマト、ブロッコリー、ほうれん草、にんじん、いちご、キウイなど

● 食事で十分にビタミンを摂取出来ない場合は、サプリメントなど補うことで白内障の予防に有効との報告もあります。

● 目から紫外線を守る
・サングラス

● タバコを吸っている方は、禁煙を行う。
・喫煙は糖尿病の発症リスクを上げてしまい、糖尿病になればさらにリスクを上げてしまいます。

糖尿病

血液中に流れるブドウ糖が体内で処理できない濃度まで上昇し、血糖値が高い状態が続く病気のことを「糖尿病」といいます。血糖値が高い状態を長時間放置していると、血液がドロドロになり血管を傷つけられるため、血管がボロボロになります。

また、人によって血糖値の数値は異なりますが、正常の方の血糖値と糖尿病の方の血糖値は明らかに違いがあります。

(例)食後の血糖値
● 正常の方・・・約130mg/dl前後
● 糖尿病の方・・・200mg/dl以上

糖尿病の種類

糖尿病には、1型と2型の種類が存在します。型によって症状などが異なります。

◇ 1型糖尿病

すい臓のβ細胞ランゲルハンス島が破壊され、全くインスリンが分泌されない状態となります。そのため、必要量のインスリンを体内に注入しなければなりません。1型には、特有の初期症状が存在します。

● 常に風邪を引いたような怠さ
● 喉の渇き
● 頻尿(トイレの回数が多い)
● 食べているのに急激に痩せていく

◇ 2型糖尿病

2型は、インスリンの分泌の働きが悪くなっている状態です。基本的に2型は「肥満」「過食」「運動不足」「ストレス」などから発症するため、食事療法や運動療法、薬の服薬などを適切に行っていれば、生活に支障なく過ごす事ができます。

しかし、遺伝的に糖尿病になりやすい人は、2型糖尿病へのリスクは高まります。2型糖尿病のほとんどは自覚症状がないため、気づいたときには重症化していることがありますので注意が必要です。

糖尿病の合併症

人間の体には、太い血管と細い血管が存在しており血糖値が高いと、細い血管からダメージを受けます。

細い血管(毛細血管)は、「手足・網膜・腎臓」に集中してあり、そこがダメージを受けると「糖尿病神経障害」「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」といった合併症を引き起こします。また、太い血管では「心筋梗塞」といった病気を引き起こします。 

糖尿病の対策

基本的には、バランスの良い食事を摂ることが大事です。余分なカロリーを摂取することは、インスリンを分泌しているすい臓に負担をかけることになります。そのため、必要以上のカロリーを摂らず、バランスの良い食事をすること糖尿病の予防や悪化を防ぐことが出来ます。

肺炎(誤嚥性肺炎)

肺炎は、かつて日本人の死因第一位になる程の恐ろしい病気でしたが、戦後抗生物質の普及により、肺炎が原因で亡くなる日本人は少なくなりました。しかし、1980年代以降から再び肺炎で亡くなる方が急増しており、特に高齢者に至っては、肺炎の中でも「誤嚥性肺炎」が原因で亡くなる方が極めて多くなっています。

高齢者の死因となる病気

● 90代
1位・・・心疾患(90~94歳)/老衰(95~99歳)
2位・・・老衰(90~94歳)/心疾患(95~99歳)
3位・・・悪性新生物(90~94歳)/肺炎(95~99歳)
4位・・・肺炎(90~94歳)/悪性新生物(95~99歳)
5位・・・脳血管疾患

● 80代
1位・・・悪性新生物
2位・・・心疾患
3位・・・脳血管疾患(80~84歳)/肺炎(85~89歳)
4位・・・肺炎(80~84歳)/脳血管疾患(85~89歳)
5位・・・老衰

● 70代
1位・・・悪性新生物
2位・・・心疾患
3位・・・脳血管疾患
4位・・・肺炎
5位・・・不慮の事故

● 65~69歳
1位・・・悪性新生物
2位・・・心疾患
3位・・・脳血管疾患
4位・・・不慮の事故
5位・・・肺炎

情報元:厚生労働省・・・https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai17/dl/h7.pdf

年齢が上がるにつれて、肺炎で死亡している人が多くなっています。そして、90歳以上になると悪性新生物に匹敵するほどの死因となっています。

肺炎(誤嚥性肺炎)にかかる原因

肺炎の中でも高齢者が最もかかりやすいと言われているのが「誤嚥性肺炎」です。そして、肺炎の中でも、誤嚥性肺炎で死亡する高齢者は多いとされています。

● 誤嚥性肺炎とは
・本来、食道を通って胃に運ばれるはずの食べ物の一部や唾、痰などが気管に入り、同時に「病原菌」も気管を通じて肺に入るため発症します。

特に脳梗塞や脳出血を起こしている方ですと、脳の機能の低下により、気管に異物が入っても脳が「咳を出せ(反射)」という命令が上手く出せなくなるため、発症のリスクが高いといわれています。

◇ 注意!

肺炎の予防接種といわれる「肺炎球菌ワクチン」というワクチン(予防注射)がありますが、このワクチンは「誤嚥性肺炎」を防ぐことが出来ません。誤嚥性肺炎の原因は「肺炎球菌」が原因ではないからです。

高齢者の誤嚥性肺炎の特徴

高齢者は、高熱が出にくいので発見が遅れ、気づいた時には重篤化しているケースがよくありますので、注意が必要です。

◇ 誤嚥性肺炎のサイン

最近、「全身がだるい」「食欲がない」「微熱が続いている」「喉の奥からカラカラ聞こえる」などといった症状が現れている場合は、軽く考えず医療機関へ相談して下さい。誤嚥性肺炎を起こしている可能性があります。

誤嚥性肺炎の予防

誤嚥性肺炎の予防には、ポイントがいくつかありますので、下記をご覧ください。

● 口の中を常に清潔に保つ
・口の中は雑菌が繁殖しやすいです。特に高齢者は、唾液が出づらくなるため、より雑菌が繁殖してしまいます。こういった雑菌が肺に入ることで、誤嚥性肺炎を引き起こす要因となります。

● 食事の前に口腔体操
・たとえば、何か運動をする前には準備運動をすると思いますが、それと一緒で食べる前にも口腔体操をして、口腔周辺の筋肉を和らげ動きやすくすると、飲み込みやすくなります。

● 食後2時間前後はなるべく横にならない
・体調などにもよりますが、食後はすぐ横にならないことをお勧めします。まだ胃の中にたっぷり食べ物が入っていると、食べ物が上がってきて気管に入る可能性があります。

もし、横になる場合には、右向きに寝てもらうことをお勧めします。(胃が右に向いていることで、左向きより消化がしやすくなります。)

● 時には辛い物も食べる
・適度にですが、刺激を受けることで、喉や気管の機能が改善することが認められています。(過度な量、苦手な方、アレルギーがある方はやめてください。)

口腔のリハビリサービス

介護保険サービスでも、口腔のリハビリサービスを行っています。例えば、通所リハビリテーション。

相談の切り口としては、「飲み込む力をつけたい」「誤嚥性肺炎を予防したい」という旨を担当ケアマネジャーに伝えれば、適切な通所リハビリテーションを探してくれます。

脳血管疾患

脳血管疾患とは、脳の血管に何らかのトラブルが生じ、脳細胞が死滅する病気の総称です。脳血管疾患は、主に下記の3つでよく知られていると思います。

● 脳梗塞
● 脳内出血
● くも膜下出血

上記のような症状は、発見が遅れれば死に至るのはもちろんのこと、命を取り留めたとしても脳にダメージを受けたことにより「麻痺」「言語障害」といった後遺症や、「認知症」を発症してしまう恐ろしい病気です。

高齢者の年代別の死因

2017年に厚生労働省で、公表されている年代別の死因についてまとめましたので、下記をご覧ください。

● 90代
1位・・・心疾患(90~94歳)/老衰(95~99歳)
2位・・・老衰(90~94歳)/心疾患(95~99歳)
3位・・・悪性新生物(90~94歳)/肺炎(95~99歳)
4位・・・肺炎(90~94歳)/悪性新生物(95~99歳)
5位・・・脳血管疾患

● 80代
1位・・・悪性新生物
2位・・・心疾患
3位・・・脳血管疾患(80~84歳)/肺炎(85~89歳)
4位・・・肺炎(80~84歳)/脳血管疾患(85~89歳)
5位・・・老衰

● 70代
1位・・・悪性新生物
2位・・・心疾患
3位・・・脳血管疾患
4位・・・肺炎
5位・・・不慮の事故

● 65~69歳
1位・・・悪性新生物
2位・・・心疾患
3位・・・脳血管疾患
4位・・・不慮の事故
5位・・・肺炎

情報元:厚生労働省

脳血管疾患の予防策

脳血管疾患の主な原因は、「高血圧」「動脈硬化」「高血糖」「脂質異常症」などです。これら一つ一つが軽症であっても、各原因が複数合わせ持つことで、脳血管疾患の引き金となります。

◇ 生活習慣の改善

基本的には、不規則な生活習慣を改善することで、脳血管疾患を予防することが出来ます。

● バランスの摂れた食事
● 適度な睡眠時間の確保
● 喫煙やアルコールを控える
● ストレスを溜めない
★ 適度な運動

などを心がけることで、脳血管疾患の発症のリスクを限りなく抑えることが出来ます。中でも、適度な運動については、介護保険サービスの利用で補えます。

たとえば、通所介護(ディサービス)です。通所介護(ディサービス)は、体を動かすレクリエーションやリハビリを行っている施設が沢山あります。

また、通所介護(ディサービス)を利用することで「朝起きて、昼間には適度に運動、夜に就寝」といった生活にメリハリができるので、脳血管疾患の予防に繋がります。運動の機会や不規則な生活をしている方は、こういったサービスの利用をされるのも一つの方法です。

褥瘡(床ずれ)

褥瘡とは、主に体の一部だけに負荷がかかったことにより、血液の流れが滞り「ただれ」や「傷」などができることを褥瘡(床ずれ)といいます。

褥瘡の発症原因

私たちは寝ているときには、無意識に寝返りをうちます。寝返りをうつことで、体の一部だけに負荷がかかることはありません。しかし、寝たきりの方の多くは、自力で寝返りをうつことができないため、体の一部に長時間負荷がかかってしまいます。

長時間負荷がかかることで、皮膚(細胞)に十分な血液や酸素などが行き渡らなくなり、褥瘡になります。

◇ 褥瘡は進行性

皮膚表面だけではなく骨に近い組織まで炎症が進行するため、早期対応をしなければ合併症にかかるリスクが高まります。

褥瘡になりやすい人の特徴

よく一般的にいわれているのが「寝返りがうてない方」「皮膚トラブルが起きやすい方(皮膚を清潔に保っていない方)」「栄養状態が悪い方」「テープ止めオムツを履いている方」「免疫力が落ちている方」です。

◇ 褥瘡が発生しやすい部位

基本的には、骨が突起している部位は褥瘡になるリスクが高いといわれています。下記に、褥瘡が出来やすい部位についてまとめましたので、ご覧ください。

★ 褥瘡が発生しやすい部位
※主に、骨が突出している部位が発生しやすいといわれている。

● 仰向けの場合
・後頭部
・肩甲骨
・仙骨部(お尻の割れ目の少し上の部分。背骨の末端)
など

● 横向きの場合
・耳
・肩
・肘
・腸骨(腰)
・膝
・くるぶし
など

褥瘡は初期の対応が大事

褥瘡は、ただの皮膚のトラブルではありません。褥瘡に対して適切な処置を行わなければ、皮膚などの周辺組織が段階的に「壊死」していきます。

さらに、この症状が進行していくと皮膚に穴が空き、やがて骨が露出していきます。このような状態までいくと、何らかの感染症にかかる可能性があり、場合によっては死に至ります。

◇ 皮膚は細菌などから守るバリア

皮膚というのは、細菌などから守る役目を持っています。しかし、皮膚に穴が空き、骨まで露出している状態だと、細菌から守る役目は果たせません。

そのため、褥瘡はたかが皮膚トラブルとは思わず、早期発見、早期治療が肝となります。

● 栄養摂取
・十分な栄養を摂ることで、褥瘡になるリスクを下げられます。また、褥瘡になった場合でも、十分な栄養を摂ることで、早期回復が見込まれます。

● 清潔保持
・不潔状態の肌(皮膚)は、褥瘡になるリスクが高くなります。常に、清潔を意識してください。また、乾燥した肌もよくありませんので、なるべく保湿を心がけてください。

● 血流を良くする
・血流が悪くなることで、褥瘡になる危険性があります。そのため、よく負荷がかかる部位周辺をマッサージすることをお勧めします。

● こまめな体位変換(体を動かす)
・同じ部位に長時間負荷がかかることで、褥瘡になる危険性があります。そのため、およそ「2~4時間」ごとの体位変換(体の向きを変える)をお勧めします。

介護保険サービスの利用

もし万が一、褥瘡になってしまった場合や、褥瘡を予防する用具を利用したいという方がいると思います。そんな方には、介護保険サービスの利用をお勧めします。

● 褥瘡になってしまった方
「訪問看護サービス」の利用をお勧めします。訪問看護サービスというのは、自宅に訪問看護師が来て、褥瘡になった部位の処置を行ってくれます。また、自宅でもできる褥瘡予防のアドバイス、治りを早くするためのアドバイスなども教えてくれます。

● 褥瘡の予防がしたい
「福祉用具貸与」の導入をお勧めします。福祉用具貸与というのは、介護保険で福祉用具をレンタルするサービスのことをいいます。福祉用具貸与の中には、褥瘡を予防する用具があります。

・床ずれ防止マット
体にかかる圧を、特殊なマットの効果によって軽減するマットです。

・体位変換器
体の向きを自動で変えてくれる装置です。一定時間で体の向きが変わるため、除圧効果が得られるため褥瘡発生のリスクを下げられます。