肺炎(誤嚥性肺炎)

肺炎は、かつて日本人の死因第一位になる程の恐ろしい病気でしたが、戦後抗生物質の普及により、肺炎が原因で亡くなる日本人は少なくなりました。しかし、1980年代以降から再び肺炎で亡くなる方が急増しており、特に高齢者に至っては、肺炎の中でも「誤嚥性肺炎」が原因で亡くなる方が極めて多くなっています。

高齢者の死因となる病気

● 90代
1位・・・心疾患(90~94歳)/老衰(95~99歳)
2位・・・老衰(90~94歳)/心疾患(95~99歳)
3位・・・悪性新生物(90~94歳)/肺炎(95~99歳)
4位・・・肺炎(90~94歳)/悪性新生物(95~99歳)
5位・・・脳血管疾患

● 80代
1位・・・悪性新生物
2位・・・心疾患
3位・・・脳血管疾患(80~84歳)/肺炎(85~89歳)
4位・・・肺炎(80~84歳)/脳血管疾患(85~89歳)
5位・・・老衰

● 70代
1位・・・悪性新生物
2位・・・心疾患
3位・・・脳血管疾患
4位・・・肺炎
5位・・・不慮の事故

● 65~69歳
1位・・・悪性新生物
2位・・・心疾患
3位・・・脳血管疾患
4位・・・不慮の事故
5位・・・肺炎

情報元:厚生労働省・・・https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai17/dl/h7.pdf

年齢が上がるにつれて、肺炎で死亡している人が多くなっています。そして、90歳以上になると悪性新生物に匹敵するほどの死因となっています。

肺炎(誤嚥性肺炎)にかかる原因

肺炎の中でも高齢者が最もかかりやすいと言われているのが「誤嚥性肺炎」です。そして、肺炎の中でも、誤嚥性肺炎で死亡する高齢者は多いとされています。

● 誤嚥性肺炎とは
・本来、食道を通って胃に運ばれるはずの食べ物の一部や唾、痰などが気管に入り、同時に「病原菌」も気管を通じて肺に入るため発症します。

特に脳梗塞や脳出血を起こしている方ですと、脳の機能の低下により、気管に異物が入っても脳が「咳を出せ(反射)」という命令が上手く出せなくなるため、発症のリスクが高いといわれています。

◇ 注意!

肺炎の予防接種といわれる「肺炎球菌ワクチン」というワクチン(予防注射)がありますが、このワクチンは「誤嚥性肺炎」を防ぐことが出来ません。誤嚥性肺炎の原因は「肺炎球菌」が原因ではないからです。

高齢者の誤嚥性肺炎の特徴

高齢者は、高熱が出にくいので発見が遅れ、気づいた時には重篤化しているケースがよくありますので、注意が必要です。

◇ 誤嚥性肺炎のサイン

最近、「全身がだるい」「食欲がない」「微熱が続いている」「喉の奥からカラカラ聞こえる」などといった症状が現れている場合は、軽く考えず医療機関へ相談して下さい。誤嚥性肺炎を起こしている可能性があります。

誤嚥性肺炎の予防

誤嚥性肺炎の予防には、ポイントがいくつかありますので、下記をご覧ください。

● 口の中を常に清潔に保つ
・口の中は雑菌が繁殖しやすいです。特に高齢者は、唾液が出づらくなるため、より雑菌が繁殖してしまいます。こういった雑菌が肺に入ることで、誤嚥性肺炎を引き起こす要因となります。

● 食事の前に口腔体操
・たとえば、何か運動をする前には準備運動をすると思いますが、それと一緒で食べる前にも口腔体操をして、口腔周辺の筋肉を和らげ動きやすくすると、飲み込みやすくなります。

● 食後2時間前後はなるべく横にならない
・体調などにもよりますが、食後はすぐ横にならないことをお勧めします。まだ胃の中にたっぷり食べ物が入っていると、食べ物が上がってきて気管に入る可能性があります。

もし、横になる場合には、右向きに寝てもらうことをお勧めします。(胃が右に向いていることで、左向きより消化がしやすくなります。)

● 時には辛い物も食べる
・適度にですが、刺激を受けることで、喉や気管の機能が改善することが認められています。(過度な量、苦手な方、アレルギーがある方はやめてください。)

口腔のリハビリサービス

介護保険サービスでも、口腔のリハビリサービスを行っています。例えば、通所リハビリテーション。

相談の切り口としては、「飲み込む力をつけたい」「誤嚥性肺炎を予防したい」という旨を担当ケアマネジャーに伝えれば、適切な通所リハビリテーションを探してくれます。